東京現代美術館の坂本龍一、パート3。オーディオビジュアルに新たな意味を与える

こちらが、私が見た作品についての解説です。

本作は元々、1996年に水戸芸術館で初演された坂本龍一と岩井俊雄による音楽と映像のコラボレーションであった。岩井の所蔵するアーカイブ資料から発掘された、坂本が演奏する「アルスエレクトロニカ97」でのMIDIデータとその記録映像データから再現展示を行う。岩井が当時のプログラミングを再構築し、坂本愛用のMIDIピアノによって、伝説的なパフォーマンスをよみがえらせる。先鋭的なメディアを楽しみつつ巧みに使いこなし、音を通した表現の可能性を拡張した坂本の原点ともいえる姿を垣間視る/聴くことができる。

最先端のメディアを遊び心のある創造性で巧みに使い、音による表現の可能性を追求し、拡大し続けてきたアーティストとしての坂本。

では、実際に音を「見る」ことを想像してみてください。それがこの特別なアート作品の目的です。

MIDIとはMusical Instrument Digital Interfaceの略で、音楽情報を作成および変換できるテクノロジーです。この作品では、MIDIを使用して音符を光のイメージに変換しています。

ピアニストである私にとって、これは特に重要な作品でした。私は、聴き手の思考を変えるほどの音楽を目指しているからです。それは「きれいなメロディーだ」とか「弾くのがとても難しそうだ」などという感想を得る音楽ではなく、思考を刺激し、「落ち着き」をもたらしたり、人生で抱えている問題を別の角度から見て、新しいアプローチ方法を見つけ出したりという「決断」や「理解」などを聴き手にもたらす可能性があると思うのです。

最高の音楽は、時には小さな変化、時には大きな変化で、聴く人の人生を変えることができると私は信じています。アーティストには、MIDI プレーヤーのように、作曲家が書いたすべての音符に可能な限り多くの意味を見出すことで、鍵盤から出る音をインスピレーションの光に変える義務があると考えています。

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